Vision グループ紹介のページ

・紹介
　天野研究室では株式会社エッチャンデスと「視覚装置」の研究をしています。一見、「視覚装置」というと画像認識の研究をしているように思われてしまいますが、あくまで「視覚装置」の「ハードウェア」についての研究をしています。

・視覚装置とは？
　「視覚装置」と書いてしまうとなんだか堅い感じがしますが、要するに画像処理用のシステム、ということになります。世間でよく知られている言葉として、「ビジョンチップ」というものがありますが、あの系統に近いものだと考えてください。

　画像処理は一般的に、認識などの高度な処理を行う「大域処理」と、その前処理として画素ごとに単純なアルゴリズムを適用する「局所処理」の二つに分けられます。このうち前者の「大域処理」では、フーリエ変換やハフ変換といった、かなり複雑な計算を施さなければならないため汎用のプロセッサやDSPと呼ばれる専用プロセッサが効果的です。一方で後者の「局所処理」では、エッジ抽出やフィルタ演算などといった、単純だけど画素ごとに同じ計算を繰り返す必要があるため計算量が非常に多くなります。そこでこの「局所処理」を何とか速く出来ないか、という考えの元に作られたものが「ビジョンチップ」という事になります。「ビジョンチップ」では1つの画素ごとにとても小さなプロセッサを用意して、全画素で並列に計算を行う事でこの問題を解決しようとしているのです。

　「視覚装置」も、基本的に同じ考え方に基づいて作られていますが、若干視点が異なります。「ビジョンチップ」では主に処理を高速化することを第一に考えているのですが、「視覚装置」では「どのような処理ができるのか」という事を第一に考えられています。例えば、「ビジョンチップ」はロボットの制御やリアルタイム画像認識などのシステムのために前処理を出来る限り速く実行しようとするのに対し、「視覚装置」ではそれよりも少し複雑なアルゴリズムを用いて、画像から大量の文字や記号を一気に抽出したりする事を目的としています。

・視覚装置の目指すところ　
　「視覚装置」の研究の主な目的は、例えば視覚障害者の方々のサポートとなるような機械を作成する事にあります。例えば点字や案内のないトイレや、音声装置のない信号機などに対し、この視覚装置を用いることでトイレのマークを見つけたり、信号機の状態を見極めたりする事ができるようになります。画像から文字の抽出ができ、それが音読できるようになれば、新聞を読む事すらできるようになるかもしれません。他にも様々な応用分野があると思われます。

・現在の研究
　Visionグループでは現在、FPGAと呼ばれる特殊なチップの上に「視覚装置」のプロトタイプを作成し、情報工学科萩原研究室のグループと協力して、今年度中に文字抽出アルゴリズムの検証を行おうとしています。また、来年度以降は記号抽出など、他のアルゴリズムの検証を行うと共に、「視覚装置」の改良を進めてゆく予定です。

・共同研究者からの言葉
　株式会社エッチャンデスは、成長する機械（ホムンクルス）を実現するための基盤技術を開発するために、
　1998年2月に愛知県蒲郡市に設立されたベンチャー企業です。 視覚装置の解説などを
　http://www.melma.com/mag/83/m00060083/
　で行っています。サンプルプログラムなどの配布やシミュレータ講座なども行っていますので、こちらも
　参照してください。

　当社の事業にご関心がある方は、 ajioka@cyberdoc.co.jp までご連絡を頂ければ幸いです。

　＜Download＞
　　　　・シミュレータ: pico.20020410.tgz
　　　　・マニュアル: 作成中
　　　　・動作の確認を行なった環境
　　　　 　　　　FreeBSD 4.4 + gcc 2.95.3
　　　　 　　　　RedHat Linux 7.2 + gcc 2.95.3
　　　　 　　　　RedHat Linux 7.2 + gcc 3.0.2
　　　　 　　　　Solaris8 + gcc 2.95.3
　　　　 　　　　Solaris 2.6.1 + gcc 2.95.3
　　　　 　　　　Cygwin95 4.0 + gcc 2.95.3
　　　　・注意点
　　　　 　　　　動作させるにはISISが必要です。あらかじめISISをインストールしておいてください。
　　　　 　　　　上に示した環境以外でもISISが動作すれば動作すると思われます。

・論文
　味岡 義明、嶋田 雅洋、天野 英晴「視覚処理並列システムの評価環境」電子情報通信学会技術
　VLD2002-135/CPSY2001-94、p23-30、2002年1月

　嶋田 雅洋、味岡 義明、天野 英晴「視覚処理並列システムの予備評価」電子情報通信学会技術報告
　VLD 2001-154、p59-66、2002年3月

　福田 静人、味岡 義明、天野 英晴「位置/大きさ検出装置のFPGAデバイスへの実装」
　FPGA/PLD03, 2003年1月 download:PDF

　福田 静人、味岡 義明、天野 英晴「局所並列画像処理を目的としたアーキテクチャの設計」
　デザインガイア リコンフィギャラブル研究会　2003年11月 dowload:PPT(要約版)

・メンバー
　-顧問
　　　　天野　英晴 hunga@am.ics.keio.ac.jp
　-学生
　　　　福田　静人(修士2年)　fukuda@am.ics.keio.ac.jp
　-学生
　　　　金森　飛匡(学部4年)　takamasa@am.ics.keio.ac.jp
　-スーパーバイザー
　　　　味岡　義明(株式会社エッチャンデス代表取締役) ajioka@cyberdoc.co.jp