MuCCRAとは?

MuCCRA(マクラ)とは,「動的リコンフィギャラブルプロセッサ」の一つであり,”Multi-core Configurable Re-configurable Architecture”の略称です.

MuCCRAという言葉のそれぞれの単語は,次のような意味を持ちます.

MuCCRAのイメージを下図に示します.

それぞれのPEアレイはアプリケーションごとに適切な構造を持ち,アプリケーション実行中にもそのPEの構造を柔軟に変化させることで,効率的に処理を実行していきます.

MuCCRAの研究背景

MuCCRAをはじめとする動的リコンフィギャラブルプロセッサは,性能対象費電力の点でFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用ハードウェアに比べて優れています.

特に,モバイル機器の社会的な浸透に伴い,バッテリーの持ち時間やビデオ再生のための十分な性能を維持することは,非常に重要な課題になっています.

動的リコンフィギャラブルプロセッサは,これまで使われていたFPGAやASICなどの専用ハードウェアに比べ,モバイル機器での利用に適しているといえます.これには,以下のような理由があります.

  1. 動的リコンフィギャラブルプロセッサは,1チップで多くのアプリケーションに対応することができるので,専用ハードウェアのように複数のアプリケーションのためにいくつも搭載する必要がない
  2. アプリケーション実行中に回路が動的に変化する(役割を変える)ので,結果的に大きなハードウェアを用意する必要がない.
  3. 回路構成が祖粒度であるため,FPGAの用に1ビット単位で回路構成を制御していない.このため,高速に回路構成を変化させることができ,オーバヘッドも少ない
    1. 特にビデオ再生やオーディオ再生などのメディア処理では,1ビット単位で情報を制御する必要がなく,祖粒度(4-32ビット)でまとめて制御できる.

これらの「小型」「低消費電力」というキーワードから,MuCCRAは携帯電話やオーディオプレーヤーなどに搭載される専用ハードウェアに取って代わるアーキテクチャという位置づけになっています.

研究内容

MuCCRAグループでは,アーキテクチャの研究に加え,回路レベルでの研究,ソフトウェアレベルでの研究も行っています.

回路レベルでは,パワーゲーティングを用いた低消費電力化などの研究を行い,より動的リコンフィギャラブルプロセッサの消費電力を落とす手法について研究しています.

アーキテクチャレベルでは,MuCCRAの結合網やPEの構造の研究はもちろん,MuCCRAを何個も接続し,その上で複数のアプリケーションを動作させるためのマルチコアの研究も行っています.また,構成情報をより効率的に転送する方法などについても研究や,より回路を小さくする手法も検討しています.

システムソフトウェアレベルでは,MuCCRA向けアプリケーション開発環境,すなわちアセンブラやコンパイラの研究を行っています.ソフトウェアレベルでの低消費電力化についても研究を行っています.

アプリケーションレベルでは,動的リコンフィギャラブルプロセッサ向けのアプリケーションの開発,たとえばメディアストリーミング処理のアルゴリズムをMuCCRA上に実装し,その性能向上率や消費電力について研究しています.

このように,複数のレイヤ,視点から研究を行うことにより,それぞれのレイヤの欠点を補うようにしています.たとえばハードウェアで実現が難しい点は,ソフトウェアでの検討を行い,プロジェクト全体での性能向上を図っています.